Factの言葉を増やすには?

皆さんこんにちは、株式会社エンゲートの宮﨑です。

研修受講者の方から「Factの言葉はどういったものがあるか教えてほしい」というご相談がありましたので、 今回は少し広げて「Factの言葉を増やすにはどうしたら良いか」というテーマでお話させて頂きます。

目次

1.KOTSUの基本的な考え方
2.なぜFactが大事なのか?
3.どんな言葉がFactになるのか?
4.Factを増やす方法


1.KOTSUの基本的な考え方

まず基本的なKOTSUの考え方は、言葉を以下の4パターンに分類します。これをFACE判定と呼んでいます。
Fact : 事実
Action : 行動
Communication : コミュニケーション
Emotion : 感情

そこから90秒で入力されたワードのFACEの比率を分析することで思考パターンを判定しています。 (思考パターンについてはこちらを御覧ください)


2.なぜFactが大事なのか?

 KOTSUが定義している「理想の思考」では、Factが70%、Action/Communication/Emotionが10%のバランスです。 なぜFactが重要なのでしょうか。

 絵画の世界では「デッサン」という作業がありますが、この目的の一つは対象への観察力を鍛える事です。 注意深く観察する事で対象をより具体的かつ精度高く捉えます。この作業が基礎となり、具体的パーツを再構築し表現を生み出す事ができます。 これはそのままKOTSUに置き換える事ができ、Factには回答者がどう対象を理解しているのかという知識・能力が現れます。 90秒という短時間でFactを多く出せる場合、とっさの判断が必要な際に事実に基づいて論理的に結論を導くことができます。 研究者の方など専門性の高い方の場合、Factが高くなる事が確認されています。

 ただし、間違ったFact、具体的でないFactが多い場合には判断を間違える可能性が高くなります。 このためトレーニングとしてはFactに現れる言葉の意味の振り返りを行い「言葉の質を高める」必要があります。 またFactのみに偏ってしまうと、成長意欲がなくなったりコミュニケーション意識が希薄化していきますので注意が必要です。 思考のバランスを自分で認識し、状況に合わせて自由自在にコントロールできるようにするという事がKOTSUの基本思想です。

(このメソッドの背景には、経験の重要性を説いた哲学者ジョン・デューイや、世界は言葉によって開かれるという社会構成主義の思想が受け継がれています。 更に近年明らかになった脳科学の価値判定と学習の仕組みにも応用できると考えています。このあたりも別の機会にご紹介します)


3.どんな言葉がFactになるのか?

Factの言葉とはどんなものか「自分自身」というテーマについて回答した例を元に確認していきましょう。 Factとは言葉の意味する通り、事実に関する言葉です。 まずは簡単な例です。

人、男、東京出身、◯◯大学

これは分かりやすいかと思います。過去から現在において変わることの無い自分を表す言葉です。 一方、以下の言葉はコミュニケーションと判定されます。

父親、部長、マネジメント

社会関係を表す言葉についてはFactではなくコミュニケーションとなります。 これは人間関係の視点を重視しているKOTSUの特色です。 また以下の言葉もFactと思われがちですが感情に分類されます。

明るい、まじめ、論理的

これらは他者から見れば「暗い、不真面目、感情的」に見える場合もあるためFactではありません。 まとめると、客観的な意味を持つ言葉で、人間関係に関するものを除いた言葉がFactと判定されます。

具体的なFactの例として、以下の言葉はいくつかの業界で入力された内容です。

業界Factの言葉
金融金融、収益、PhD、構造、相場、リスク
エンタテイメントデザイナー、プロデューサー、クリエイター、体力、時間
小売笑顔、売り場、くらし、ファッション、アパレル
理美容理容師、練習、筋トレ、掃除、規則

仕事面では主に能力や知識から出てくる言葉がFactとなりますので、業種によって異なる事が分かるかと思います。 一方で「健康」や「笑顔」などの言葉は業界を越えて現れてきます。


4.Factを増やす方法

基本的なFact獲得の流れをお伝えます。以下の順序でトレーニングしましょう。

1.自分のFactを探す

 もともとFactが無い方の場合、1つ言葉を出すだけでも苦労する事が多いです。 ですので90秒間でいつもより言葉が出なくなります。この点は許容して、なんとかFactの言葉を出す様にします。 最初のきっかけとしては、自分の過去の経歴(出身地、大学)や、今の仕事(アナリスト、エンジニア)など、 表層的な部分で構いませんので少しずつ言葉を出していきましょう。

2.Factの数を増やし観察力を高める

 次のステップはできるだけ沢山Factが出るようにします。ポイントはどんどん連想していくことです。 例えばアナリストであれば、分析対象や分析手法などの言葉を連想していきます。エンジニアであれば、使用するプログラミング言語、開発手法、フレームワークなどです。 行き詰まったら視点を変えて、今度は経歴から掘り下げて、似たような連想をしてFactを出していきます。 このトレーニングにより、言葉から言葉への繋がりを引き出す感覚を習得でき、物事への観察力が高まります。

3.Factの質を上げて洞察力を高める

 次に質を上げていきます。これまでの過去の回答を眺めながら「これらの言葉を一言で表現するとこれだな」などの、共通点を探してみてください。 そうすると、もともとフワッとした意味だった言葉が、より的確な意味の言葉に進化しているかと思います。 これがFactの質の向上です。数を増やす→質を上げるを繰り返すことで洞察力を高める事ができます。

4.経験をする

 更にFactを増やしたり質を上げるためには、経験そのものが必要になります。 記憶に無い言葉は出てきませんので、いつもとは違う環境に触れたり、新しい仕事上の課題に挑戦しなければなりません。 思考の成長が鈍化したと感じた場合、大きく違った思考が必要な体験を行い、新しいFactを獲得していく事になります。 今まで丁寧にFactを積み上げてきた方にとっては、新しい体験から引き出せるFactは以前とは異なる意味を持つでしょう。